東北文教大学

英米文学史

阿部 裕美(教授)
担当者名/
阿部 裕美(教授)
 歴史の勉強を古い時代から始めると、現代に至る前に時間切れになることがよくあります。そこでこの授業では、20世紀前半のモダニズム文学から始め、時間を溯る形で16世紀エリザベス朝時代の文学までをたどっていきます。各時代の特徴や雰囲気を映像資料で実感しながら、英米の文学史の大枠をつかむことを目指します。

15回分の内容

> 授業概要の説明、予備知識の紹介> 英国史の基礎知識
> イギリス文学の「常識」> アメリカの歴史と文学の「常識」
> 20世紀の英文学―ジョイス> 20世紀の英文学―ウルフ
> 19世紀の英文学―ディケンズ> 19世紀の英文学―ロマン派
> イギリスの文学とアメリカの文学> 18世紀後半の英文学―詩の世界
> 18世紀の英文学―小説の夜明け> 18世紀の米文学:アメリカの夜明け
> 17世紀の英文学:神vs人間> 16世紀エリザベスⅠ世の時代
> まとめ:全授業の総括

英国史の基礎知識

 私たちは、英国のことを簡単に「イギリス」と呼んでしまいますが、実は4つの異なる文化圏から出来上がっていることをご存知でしょうか。
 この授業の第2回目では、英国は単一的な国家ではなく、イングランド、スコットランド、ウェールズそして北アイルランドと、異なる文化圏からなることをしっかりと学びます。たとえば、ウェールズでは駅名の看板にウェーズ語と英語が併記されていたり、スコットランドでは特有の方言があったり、アイルランドには独自の宗教が残っていたりします。英国の中心イングランドと異なるそれぞれの地域には固有の歴史があり、過去の出来事がその後の歴史に大きな影響を与えてきていることを忘れてはならないのです。
 また、文学作品には、その作品が生まれた時代の社会や文化、そして歴史が凝縮されています。その作品が書かれた時代の背景をきちんと理解してこそ、その意義を適切に理解することができます。従って、各時代の歴史的事項やその影響力をていねいに確認することが重要です。
 しかし、歴史の流ればかりをたどっていても、文学作品の面白味はわかりません。そこで授業では、主な文学史的事項を確認したのち、出来るだけ多くの文学作品の原文に触れるようにしています。

19世紀の英文学―ディケンズ

 第7回目では、チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツウィスト』の一部を英文と映像で確認します。

 時は19世紀半ば、救貧院で生まれ育ったオリバーは、他の少年たちとともに非常に劣悪な環境で暮らしていた。満足に食事が与えられず、肉体労働をさせられ、辛い毎日を送っていた。ところがある日、その状況にたまりかねた救貧院の少年たちは、ある行動を起こすことにした。くじ引きで負けた者が、大人にあることを訴えに行かなくてはならないのである。そして、運悪くその役目にあたってしまったのがオリバーだった。仲間が注目するなか、仕方なくオリバーはそのひと言を口にした―「I want some more. (お粥のおかわりを下さい)」と。

 実は、このあとが大変なことになってしまいました。文句を言わず規則に従うのが救貧院の掟です。きまりに逆らっておかわりを要求するなど、あってはならないことでした。それゆえ、オリバーは無謀な要求をしたことで「問題児」とみなされ、救貧院から追い出されてしまったのでした。さて、その後のオリバーの運命はどうなってしまうのか...。
 はたして作者のディケンズは、このような作品を書いて何を訴えたかったのでしょうか。
 小説の最後では、オリバーが良家の出身であることが判明し良い暮らしを手にするのですが、現実ではそのような「ハッピーエンド」はほとんどありません。貧しく生まれた者は、生涯貧しい暮らしを続けるしかなかったのです。また、劣悪な労条件で働く子どもたちも多く、大きな社会問題となっていました。そのような社会の悲惨さを訴えるため、ディケンズはこの物語を書いたと考えられています。

 このように、小説は単なる娯楽作品ではなく、社会の不条理を糾弾する政治的なメッセージを発することもあります。こういった例からも、いかに文学作品が社会や歴史と深くかかわっているかがわかるのではないでしょうか。
 皆さんも文学作品と社会・文化・歴史とのつながりを実感しながら、英米の文学の世界をながめてみませんか。きっと多くの「発見」に出会えるはずです。


(H24.10掲載)

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