26 まんじゅう

 むかしむかし、藩がちがうと、しきたりから礼儀作法から、細かく言えば、食いもの、その他着物にいたるまでいろいろ、村山モンペとか、置賜モモヒキなて、置賜モンペなて違っていた。
 ところがある時、七ヶ宿のある村さ、まんじゅう一つ落して行った。ところが大変なこと始まった。まんじゅうなていうの、山の中だから誰も見たことない。ほして、
「いやいや、しくじりさ行ったれば、すばらしいもの落っでだっけ。何だか見たどこ、ファファしたようだげんど、動く」
 まさか、動いたわけでないげんども動いたように見えた。何ものだか分んねていうもんで、村中みな集まった。
「ほれ、おれも行ってみる。おれも行ってみる」
 大きい村でもないもんだから、
「こいつは何だか分んねもんだから、庄屋さんに聞いてみろ」
 庄屋さんさ行って聞いた。
「おれは、この年まで、いろいろ生きて来たげんども、ほだな話は見たことも聞いたこともない。どれ、おれも行ってみんべ」
 ていうわけで、行ってみたら、庄屋さんも見たことない。
「へぇ、不思議なもんだ。どうだ、かいつ刀で切ってみろ」
「かからねか」
「いやいや、こだえいっぱいしてだから、かからっだて、あれだべ」
「えい」
 というわけで、切ってみたれば、中から小豆出はった。
「はぁ、ここ二・三年、小豆の出来悪れど思ったれば、こんちくしょう、みなこいつ食ったんだ」
 て、切らっだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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