12 食わず女房

 欲たかりが、飯(めし)食ねおかた欲しいて、飯食ねおかたもらったど。
「飯食ねでいられるなて、妙なもんだな」
 なて、山さ行ったふりして裏板の上側さあがって見ていたったど。
 ところが、そのがが(おかた)、飯炊きはじめた。五升飯炊いて、やきめし握っ た。そして髪解いだど。そしてそこさ、ストンとやきめし五升も入(い)っでしまった んだど。
「なんだこりゃ、ひどいもんだ」
 て見っだんだな。飯食わねでいるわけないと思ったら、それは化けものよ。そ れを見たもんだから、追っかけられて、逃げて逃げて菖蒲とよもぎの原さ隠っだ ど。そんで助かったから、五月節句には菖蒲とよもぎをさすんだど。どーびんと ろろ。
(遠藤昇)
>>まま子いじめ 目次へ