59 地蔵浄土

 むかしあったけど。
 おばぁさんとおじいさんがいて、おばぁさんが朝げに座敷掃除すっどき、団子まぐっできたけど。そいつ掃いて転ばしてやったら、どこまでも転んで行って、拾うべと思ったら、拾わんね。おじいさん起して、まずおじいさんが追掛けたごで。そうすっど、おじいさんが、
「団子どの、団子どの、どこまでござる」
 て追かけたげんども、止まんねがったど。そしてよっぽど山奥さ行ってみたら地蔵さま立ってたど。その地蔵さま拾って食ったごんだど。そしておじいさんが、
「地蔵さま、地蔵さま、団子来ながったかな」
 そしたら地蔵さま、
「来てあったげんども、おれ拾って食ったから、その代り、おれお金もうけさせっから、おれの膝の上さあがれ」
「とても地蔵さまのお膝の上さなの上がらんね」
 そしたら、膝までやっと上がったら、
「肩の上さ、あがれ」
「肩さなどとっても上がらんね、もったいない、膝までさえやっと上がったから上がらんね」
 て言うたら、こんどは、
「頭の上さあがれ」
 て言うた。
「とても地蔵さまの頭の上さなど、足掛けらんね」
 て言うたげんども、
「ええから上がれ、上がれ」
 て言わっで、まず上がったど。地蔵さまの大きな扇、そいつを授けて、じさまさ、 「晩げ、鬼、メクリに来るから、そうすっどお金いっぱい出してやってしてっから、そん時、鶏の真似しろ」
 て言わっで、そして頭の上さあがっていたら、鬼共ぁ来て、メクリ始まったど。そしていっぱいお金ひろげた頃、その扇でパタパタと羽ばたきの音して、コケコーて音立てたど。鬼共ぁ一番鶏。三番鶏になっじど帰って行(い)んから、まだ夜中だげんども、鶏、刻を作ったと思って帰って行ったど。そしてはぁおちて来て、
「お金、みな呉っから、さろって行け」
 て言わっで、おじいさんがさろって行ったど。そうすっどこんど、お金いっぱいもらっていろいろなもの買っていたどこさ、隣のおばぁさんが火もらいに来た。そしたらおばぁさんが、
「どうして、こがえにお金もうけた」
「おらどこのおじいさんが団子転んだな、追かけて行ったら、地蔵さま立ってあったどこで地蔵さま拾って食ったから、そのお礼に、その頭さあがって鶏の真似しっど、お金いっぱいもらって来た」
 て言ったら、こんど隣のおばぁさんもけなれぐなった。ほんじゃ、おれも…、団子拵って、ほんじゃ転ばして、おじいさんが追かけて行ったど。また団子ころころ転げて行って、そして地蔵さまの前さ行って、止ったもんだから、地蔵さま拾って食ったわけだ。そうすっど、
「団子転んで来ながったべか」
「転んで来たげんど、拾って食った」
 そしたら、
「晩げ、鬼衆はメクリに来っから、鶏の真似しっど、お金おいて逃げて行んから、そんどき、そのお金呉っでやっから、団子の代りに…」
 て言わっで、地蔵さまに、あがれとも言わんねども、トントンと地蔵さまの頭さあがって、そして扇を借っで、鶏の真似したそうだ。そして鬼共もまた来てメクリ始めっど、鶏の真似したそうだ。そうすっど、鬼共、もはや帰る頃になったげんど、少し早いがったから、嘘見つけらっでしまったけど。とーびったり。
(男鹿てつの)
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