2 ごしゃげた時は決して手を動かすな

 むがしむがし、沖縄を平定した薩摩軍は、数多くの役人を送って年貢をきびしく取立てたんだど。ただでさえ旱魃などばりある沖縄では容易でながったんだど。みんな娘まで売らんなねようなあんばいだったんだど。
その中で、一人の情深い役人がいて、島民に金まで貸してめんどう見だ人、いだんだけど。
ところが、一人の人が期限が来ても、どうしても返済すね人いだんだけど。催促に行ぐど、今度、今度てばり言ってなかなか()さね。ある時、今日こそは刀にかけてもと思って行ったれば、実は家は幼子ばり多くて、て言ったれば、役人が問答無用て切りつけると思ったれば、
「お役人さま、お役人さま、決してごしゃげだ時は、手を動かさねで()ろ。手を動かさねで呉ろ」
て言われて思い止まって、そのうち所用があって、その役人が家さ帰ったんだど。ほうして自分の家さそおっと入って行って、薄暗い時、寝床見だれば、自分のおかたど男が寝っだんだけど。「このばいため!」一刀両断にして()んべと思ったんだど。んだげんどその時、〈ごしゃげた時、手を動かすな〉ていうことを思い出して、
「これこれ、今帰ったぞ」
て言うて見たれば、男だと思ったな、自分の母親が、男の格好して、嫁ば守っていだなだけど。もしも手を動かしていれば、大事になっどこだけどはぁ。
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