26 高砂族の娘―九州で聞いた話―

 あるすばらしい富豪に、女の双子が生まっだ時、はいつば舟さのせて流してよこしたわけだ。そうすっど九州の鹿児島県の南端さ辿りついたそうだ。して、そこさ付人と共に流っで来て暮していた。
 姉の方がとても妹思いで、妹と会いたいと、何とか国さ連れて行きたいと言うて、伴ぞろいして姉が旅立ったど。舟でな。
 そしてようやく探して鹿児島県のある島さ着いた。ところが妹が言うた。
「おれが行けば姉ちゃんさ迷惑かかっから、行ぐなんてさんね。あなたとおればりええったって分かんね。世間というものがあるんだから」
「いや、お前帰って呉ろ。おれ、ここさ残っから」
「いや、ほだな姉ちゃんば置いてなの、帰らんね」
 そういう風なヤリトリが続いているうちに、二人がほこで疫病の神に侵されるわけだ。ほしてとうとう二人が逝くなってしまって、右の方が、姉が島。左の方が妹が島になったど。
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