５３　大人語りの「天人女房」

　天人が羽衣盗らっだから、漁師の家さ追っかけて来るわけよ。そして漁師の源五郎は、うしろも見ねぇでどんどん来たど。そうすっど源五郎は家さ入った。
　その天人も仕方なくて、うしろ追っかけて来て、家さ入ったど。ほして源五郎は若衆なもんだから、天女の体見て、欲情にからっだど。ほっつ見っだ天女が聞いた。
「それは何ですか」
「いや、これは…」て、困って、
「こいつは掃除棒ていうもんだ」
「掃除棒ちゅうのは、どうするんだ。どこ掃除するんだ」
　て聞いた。天女は下賤の、そういうものは見たことなかったからな。
「体のまんなかから、いろいろ不浄なもの、たれ流していっど、バイ菌が入って体がくさってくる。そこを掃除する棒だ」
「そんじゃ、わらわのも、くさってるか」
　聞いてみたらやっぱりそうだった。月のものがあったど。それで、
「んだらば、おれが掃除してくれる」
　というわけで、人作りが始まったど。ほしてだんだんに筋が通るようになって大変ええ掃除棒だっていうことになって、ほだえしているうち、子どもが出て夫婦になって暮すようになったど。
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