ねずみと子ども

 むかし、あるところに、秋になったら、子どもがいてな、栗いっぱい実(な)ったから、山さ栗拾いに行ったど。袋持(たが)ってね。
 ほうしたら、栗いっぱい落っでで、二人で行ったんだって。ほうしていっぱい落っでだから拾っているうちに、暗くなったんだけどはぁ。暗くなったから、何とも仕様ないし、遠い遠い山の中だから、子どもたちも家に帰るに帰られねくて、ほして、栗の木の根っこさ野宿したんだって。
 ほしたら、暮ごろ、栗の木の根っこんどころに、こんな一つ孔があいっだんだけど。ほしてほこでチチクヨ、チチクヨ、チチクヨ、孔の中でいうんだどよ。ほれから、袋さいっぱい拾ったんだけどな。そこの中さ一つ入れだど。ほしたらチチクヨ、チチクヨ、チチクヨというもんだから、面白くて面白くて、全部入れてしまたんだど。ほしてるうちに暗くなったんだど。して暗くなったれば、どこかから、ほの、ええおかあさんが出てきて、ほして、
「あの、うちの息子たち、今日はどうもごちそうさまでした。んだから今夜、おら家で、餅搗くどこだ。んだから餅招ばっでけらっしゃい。んだからちょっとあんた方、目つぶってでけらっしゃい。家さ着くまで」
 ていうことになって、目つぶったんだって。子ども二人が。ほうして行ってみたれば、御殿のように大きな家で、さまざま飾ってよ、一生懸命、ねずみたち、餅搗きしったんだけ。ほしてね、
    何にもおかなくない
    ニャーの音だけ おかない
    孫ひこの代まで
    ニャーの音ばり聞かないように
    スットコイ スットコイ
 て、餅搗いだんだど。そしたら兄の方は、「ニャオー」て言ったど。ほしたれば兄の方が、ぽいっと目覚めてみたらば、木の根っこさ野宿しったんだけど。弟の方だけは、
「さぁさぁ、お客さん、餅できましたから、食べてください」
 て言わっで、そして、
「小豆餅ええか、納豆餅ええか、クルミ餅ええか。何でもええもの食べてけろ」
 ほして、いっぱい御馳走になったんだって。ほしたれば、こんど行ぐどき、
「何、土産ええ」
 て言(や)っじゃんだど。
「何でもええ土産上げっから、家の子どもたち、こんなに御馳走になったんだから、何でもええ奴、土産に上げる」
 て。弟の方は、何土産もらったらええか、まず訳わかんねわけだ。ほうしてるうちに、夢みたいなもんで、ぽいっと目覚めてみたら栗の木の根っこの下で、また眠てだんだけど。子どもらだ。

 うちのおばぁちゃん、よく聞かせたもんだ。そう言えば最近の「絵本」は大分変ってますね。「瓜姫子」ていう話、わたしだち語んなど違うようだな。やっぱりこれも土地土地によって語り方がちがうんでしょうね。
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