6 かちかち山

 じんつぁが山さ木伐(き)りに行ったど。そんどき、狸(むじな)とって来たて。ばんちゃが米搗きしったとき、
「解いて呉ろ、おれ搗いて助(すけ)っから、おれ、ばんちゃ搗いてくれっから、おれ米搗きして呉れっから、解いて呉ろ、解いて呉ろ」
 て言うて解いたど。そして解いて呉っじゃば、その米搗き杵、チョクチョクしったな、そいつで、ばんちゃどこ殺してはぁ、じさま山さ行くとき、「またおれ、柴取って、先に来っから、狸煮て拵って置けな」て、出て行ったところが、ばばどこ殺して狸がばばの着物をきて、ばば汁しった。
「ばば、ばば、今来たとこだ、煮っだか」
「煮っだ、煮っだ」
 て言うた。ばばとも知しゃねで、じんつぁが食ったところが、「しないなぁ」て言うた。そしたら、どこからともなく美しい鳥が飛んできて、
    しないもしないも道理
    ばば汁だもの
 て言わっじゃって。そしてよっくそう言うもんだから、顔面(つら)見れば、ばばの顔面でない。狸の尻尾現わっだ。そんどき、そのじさまが泣いて、また山さ行くべ、
「じじ、じじ、なして泣いてる」て、兎が来て言った。
「おらえのばば、狸に、こういうごんで殺さっではぁ、ばば汁って、おらどこの狸に、ばば殺さっじゃごんだ」
「おれ、狸どこ退治してくれる。おれ退治して呉れっから…」
 て、そして、
「ほんで、頼むぜ、兎」
 て、兎が狸と、山さ柴伐りに行った。そんどき、背負って来っどき、狸、柴伐って一緒に来っどき、カチカチ、カチカチて鳴る。「何の音だい」て言うたら、「入日の音だ」なて言うて、うしろさ火点けて来たんだど。そうすっど、「あつい、あつい」ているうちにはぁ、ぎっつい衣裳着たもんだから、脱げない。背負ったの降ろさねうちに背中焼けたど。して、火傷したもんだから、こんどはぁ、兎が南蛮味噌拵って、「火傷の薬、火傷の薬」て、ふれて行ったところが、火傷になって寝っだもんだから、その火傷の薬買ってつけてみっかと思って買ってみたところが、南蛮味噌なもんだから、かえって背中焼けて痛がったって…。そんでもまだ仇(かたき)とらんねもんだから、ある日、兎が舟つくり始めたど。その舟、杉皮舟で、
「兎どの、兎どの、おれにも作って呉んねぇか」
「あまりええ、いつのいつかまで拵って置っから、来い」
 て。
「のってみっから来い」
 て言わっで行ったところが、兎の舟は杉皮で拵った舟、それから狸の舟は土舟だったど。そんでズルズル、ズルズルと沈んでしまって、そこで櫂棒で叩いてはぁ、仇とらっじゃど。ここでばばの仇とって呉っじゃど。とーびんと。
(須藤とみゑ)
>>置賜平野の昔話1 目次へ