12 お糸唐糸

 むかしあったけど。
 ままかかがお糸ば長持さ入っで、そうしてズルズル引ずって行って、山さ連(せ)て行って埋めてしまったど。連(せ)て行かれっどき、妹の唐糸はケシの実を入れてやって、そいつをボロボロと撒いて行ったど。
 そして唐糸が「姉さ、姉さ」て行って見たところが、ケシの花あるもんだから、そこ掘ってみたれば、「姉さ、姉さ」て、土さ声立ててみたれば、向うで「アイ、アイ」て、返事したど。掘って、二人で家さ来ねで、仙台の方さ逃げて行ったど。そしてお父さんが泣いて目(まなぐ)見えねぐなったど。そうしてお父さん、
「お糸唐糸いたならば、この目がぱっちり開きましょう」
 どて、ずうっと探ねに行ったらば、唐糸の方が仙台の方さ行って、子守りしったけど。姉さが女中しったけど。そうしたもんだから、唐糸の方がオボコおぶって、ゆさゆさというていたらば、
「何だか父ちゃんに似た人、今、〝お糸唐糸いたならば、この目がぱっちり開きましょう〟て、座頭になって杖ついで来たけぜ、姉ちゃ」
 て言うたば、
「何、ほんじゃ、今またこっちゃ戻って来んべから、ほんじゃ黙って聞いでんべ」
 て、姉ちゃも出はってきて、二人で整っていたれば、案の如く、父ちゃんなもんだから、「ああ、父ちゃんだべ」て言うたらば、「お糸唐糸だか」て言うたらば、目ぱっちり開いたど。そして仙台の方ではぁ、かかどこ、ふん投げて行ってはぁ、三人で暮したど。どんびんと。
(中條ちゑの)
>>置賜平野の昔話1 目次へ