29 南の山の馬鹿聟― 数の子―

 数の子うまくて、御馳走になったど。
「あらら、うまいごんだらば、たんと上がれ、甕さいっぱい漬けっだから」
 て言うたれば、知しゃねふりして、その甕探したらば、いっぱい入ったけど。
 そんで便所さ持って行って食ったど。そして甕さ頭突込んで食ったら、取んねぐなってしまったど。どさ行ったと思ったら、便所の中で甕かぶっていたど。そして誰だか次に便所さ行って、尻ごなかったから、石で尻のごって、その石打って寄こして甕さ当って甕が破っだど。
(中條ちゑの)
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