15 蛇聟

 まいど、お前だみたいな若い娘が病気で寝っだったど。そこさ毎晩げ、若いきれいな男が遊びに来んなだど。忍んでよ…。そして夜中になったていうど来て、毎晩げ来て、その娘、だんだんにやせて行くなだど。
 ある日、おっかさんどさ言うたんだど。「毎晩げ、こういう人が来んぜ」て、そしたば、「お前が、糸、裾さ縫いつけてやれ」て教えたごんだど。そして行くとき、だんだんにほぐしてやったていうわけよ。そうすっどその行ったどこ次の朝げ、ずうっと糸辿って行ったど。そしたば何穴だか知しゃねげんども、穴さ入って行ったど。そうすっど蛇なんだど、そいつがよ。中で、穴さこう耳を押しつけて聞いっだてよ。そしたら、
「お前はその人間というもの、賢こくて、お前から、袴の裾縫わっじゃがら分んねぞ」
 て、親蛇だかに教えらっでいだんだって、そうすっど、
「いや、さしつかえない、何十匹どかの子ども、置いて来たから、おれが死んだて、さしつかえない」
 て語っていたどころが聞えだんだって。そしたらその親蛇が、
「人間つうもの、賢こくて、菖蒲湯立って入っど子どもは、みな出るもんだ。んだから人間には敵わね」
 て教えらっじゃて。んだから五月節句に菖蒲湯立てて入るもんだど。そいつが理由(いわれ)で、五月の節句に菖蒲湯を立てるもんだど。
(鈴木よし江)
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