28 貧乏神(1)

 うんと貧乏して、おっかさと二人暮しで、前には馬方して薬買って飲ませていた息子いだっけど。なんぼ稼いでも稼いでも金たまんねで貧乏しているって。そして何としたらええんだか、まず思案に余っているうちに、おっかさが死んだちゅうわけだ。おっかさんが死んでしまったから、こんで、こがえ家にいても仕様あんめぇから、江戸さ行って何か商売でもしんべと思っていたば、行くべとて出(で)だしたって。
 そうすっじど、うしろから小汚いような年寄りじさまが追かけてきた。「お前、何だ」て言うたらば、
「お前が江戸さ行く時にゃ、おれも行ぐ」
「お前、一体、誰だ」
 て言うたらば、
「先祖代々ついてきた貧乏神だ。ほんでお前行く時ぁ、お前の後ついて、どこまでも行ぐ」
 て追かけてきた。
「ほんじゃら、まず、ここで一服つけて…」て戻り返ってお茶飲んだそうだ。
「ここで離れっか、離んねが」
「離んね、どこまでもついて行く」
「困ったもんだ。なじょして呉っか」
 て思って、考えて、ずうっと行ったらば、どこまでも追かけて来っど。休むと休んで、ボロ草履はいて、ボロ着物きて追かけて来るというわけよ。
 そうして行ったれば、大きい川のほとりさ出たなだど。そうすっどこの川渡んねげば行かんね。そんで何としたらええかと思って、こんど考えたど。
「この川を石投(ぶ)って、向う側さついた人はおぶさること。つかない人はおぶうこと」
 て約束して、石投(ぶ)ってみたわけよ。そしたら息子の石が川の中さ落ちて、貧乏の神の投(ぶ)ったのが向う側さ行ったど。そうすっど約束だからおぶったわけだ。そうしてそっちゃ行ぐと深いの、こっちゃ行ぐど浅いのって背中から指図してるってよ。んだげんども深いどこ深いどこって行って川さ沈めてしまったど。
「これから、おれんどこから離れっか離んねが、離れっこんだら助けてやる、離んねごんだら沈めてくれる」
 そしたば、「離れっから助けて呉れろ」て、そうして助けて、向い側さ行って、「ほんで、確かに離れっか」「離れる」。そうすっどそこで離っで、どさか行ってしまったど。そうして江戸さ行ってから砂糖問屋したんだど。そうすっど当って大長者になったど。んだから貧乏の神くっついているうちは、わかんねど。どーびんと。
(鈴木よし江)
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