31 てんつ話

 「なにか一つ、てんつ話聞かせて行って呉れんだ、まず」
 て、おさえたど。そしたら、
「なに、今日、てんつ話なの、ほがえな人だまし話などしていらっじゃもんでない。どこそこの誰それさんなど、とんでもない、お前まだ知(し)しゃねのが。お前の叔父さまなど、今、生き死にしっか知(し)んねような災難に会ったな、おれぁ今、そこさ行くどこだ。ほだな話語っていらんめえちゃい」
 として、テッテッ、テッテッと走って行ったずもはぁ。そうすっじど、今度そがえなこと語っていらんね。その人は、まずはぁ、魂消て走って行ったど。行ってみたば、
「なんだ、何そがえに息切って走って来たなよ」
「ほんじゃて、こういった」
「何だ、貴様、嘘語って聞かせろなんて、注文して聞かせらっじゃな、またほんじゃ、抜かっじゃなだぜ」
 いやいや、大笑いしたごで。大笑いどころか、ことの掛けた話だ。
(近きよ)
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