49 髪とかす女

 とうちゃんが用足しで山奥さ行って帰るしまに、暗くなったって。そして暗くなって近道行くべはぁて、近道来たって。そして近道来たらば、山の中に灯り見えっけど。
「あら、あそこにあがな山の中に灯り見えるな」
 て、こう思って行ったげんど、そのとうちゃん用足しに行って遅くなったもんだから、山の中なんだし、灯の傍まで行ったら、女の人ぁ灯りで髪とかしていたけど。
「畜生、ほに、おれどこ小馬鹿にする気だな、この畜生」
 どて、とうちゃんは、
「見はらかして呉んなね」
 て行ったど。そしたら嫁に行って、よくよく縁切んねくて、髪とかすと縁切れるて、「おれ、狐でないからな」
 て言わっで、安心して帰ったけど。縁切っだいときは、山の中で髪とかすと縁切れるていうたもんだ。
(中條ちゑの)
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