4 七草がゆ

 むかしあるところに、親孝行な息子がいて、年寄りになってはぁ、親たち目も見えなくなる、歯もなくなる、耳も聞きつけなくなってな、情けなくて、神さまさ、
「いま一度、若くしてまず、親に何とかして若返ってもらいたい」
 て思って、一生けんめいにお祈りしったらば、ある晩枕神立って、
「お前はやさしい心だから、願いごとかなわせたい、何かかなわせたいと思っていたとこだが、そうか」
 神さまは、
「七日正月の日、深い海に大きな山ある。ここに白鳳という鳥の大きな、毎年七草食いに岡さ来る。そうして七草食べてって、何千年も生きてきたという。んだから、七草のとき、歯ないから柳の木の盆の上さあげて玉椿の木でやわらかにして、セリは酉の刻に混ぜて、はたいて酉の刻に東の方さ行ってみっじど、清水湧いてるところある。そっから若水汲んでもって来て、それで御飯をやわらかにして、七草を入れておかゆにして、やわらかくして親に当てがえ。そして鳥に見つけらんねように六日に七草を摘んで、鳥が酉の刻に帰って行んから、鳥の帰って行かねうちに、御飯をみんな食べてええから、みんなで御飯食べろ」
 て言わっだど。目覚ましてみたら誰もいね。
「はぁ、ええこと神さま教えておくやった」と思って、六日の日、酉の刻に行って七草を摘んで、セリはよくはたいて、酉の刻に混えて、東の方から若水を汲んで、煮てあげたど。毎年十年ずつ若くなったど。そのうちに耳も聞えてくる、目も見えてくる。歯も出て若々しくなって、長く親と一つに暮らしたど。それがために今もって七草というものを食うようになったど。とーびんと。
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