7 弘法大師と大荒山不動

 昔、弘法大師が霊山を造るがために、鬼面川を登ってきましたら、田沢の方の川から、桐の葉に五色のぼんでんがのって流れてきた。これを見た大師さまが、この奥に行けば神さまにお会いできるのを喜んだ。そしてなお登ったら、八谷の方からの大荒山からとの落合にくると、また大荒沢の方から、桐の葉に五色のぼんでんがのって流れてきました。お大師さま、この大荒山だと喜んで前の山にて、三年の行をすることにした。行をしているうちに、いろいろなことがありました。
 白髪の年寄りが斧(まさかり)砥いでいたので、何をしていると尋ねると、これを針にしてトゲを掘るのだということで、大師さますら神さまにはげまされたこともあったということです。三年間も黒森の家の近くを登り降りされたので、汚れた衣や髭はぼうぼうであり、あまりにもみすぼらしい大師さまが来て、少し下さいと願ったが、家の芋は石芋だから食われないと断わりましたので、それ以来、ここの家の芋は石芋になり、今だに芋が作れないそうです。
 その後、大師山と名がつき、大師山の頂上からは、お不動さまの大山のお滝が真正面から見えるところです。お大師さまも三年間の行を終り、神さまとお会いして、お不動さまとしてお聞き下さいました。
 大師山頂上には、お大師さまの袈裟掛石やオゴマを焚いた跡があるそうです。そこには蔓が行っても、近くからもどっているそうです。
 また、黒森の家には七不思議があるそうです。戸締りすると泥棒が入ることや、家の中からは雨だれの音がしないこと、三十三才になるとなくなる主婦があるそうです。
(内藤三郎)
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