10 田沢の七不思議

(1)弘法大師がそこを通ったとき、川端で里いもを、ばばちゃが洗っていたとこさ来て、
「その芋、少し分けてもらわんねが」ていうたところぁ、
「こいつぁ石芋で、とっても食(か)んねから駄目だ」
 て、そういうたど。それで、今でもそこから穫れるのは石芋で、食(か)んねがら芋は作らね。

(2)その弘法大師さまが、そん時に、「ばばちゃ、サネが見えんぜ」ていうたど。そうすっど、「おれなど、とっくにサネなど、もげてしまってなくなった」ていうたど。そんで、その家のシンショウ持ちのええのなの引受けて来(く)るど、その人はみなサネがもげるて、そこを患らうそうだ。

(3)その家では、また家の戸の口の錠前を掛けない。錠をかけると、かえって泥棒に入られるという。

(4)その家では、雨が降っても、雨だれが落ちないという。

(5)そこの家の田にいるツブ(たにし)はみんな盲目(めっこ)だそうだ。

(6)そこの家の田に入っても、ヒルは一匹も足などに吸いつかない。

(7)そこの家で祀っている不動さまは、栗のカラが不動さまになったもので、「栗から不動」といっている。

(関場亥之助)
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