21 ネズミの金搗き

 むかし、大判小判、毎日毎日、ネズミ金搗きすっど。そして干(ほ)すごんだど。稲場さ。―稲場て、むかし茣蓙織るために菅(すげ)干ししたんだど。―そして、じさ、菅刈って干しに行ってみたば、何だか異な音すっずも。そしてこんどトントン、トントンというし、よく聞いっだば、
   ストトン トントン
   百十になるまで 猫の音聞きたくない
   ストトン トントン
 て、大きなネズミ、何か搗く音すっじもの。ガチガチって…。そのうちに搗いたのは、一生懸命で片端さネズミ運んで行って、そのじさ、菅干した向うの方さ並べっだど。それでまた、
   ストトン トントン
   百十になるまで 猫の音聞きたくない
   ストトン トントン
 て搗いで、いっぱい搗いた金、稲場の片端にひろげたずも。それから、これ、猫の音聞きたくないつうもの、猫ば恐っかなくてだべと思って、猫の真似してみっかと思って、じさ、ニャオニャオて言うたずも。
「はぁ、猫来た」
 つうもんで、その金しまわねで、みな隠っでしまったど。それからさぁ、そのじさ、みなさらって来てはぁ、家さ来て、ばさと何か買ったり、きれいにして、お菓子でも買って、お茶のみしたじだがな。そさ、隣のばさ来たずも。
「何と、こらほどの御馳走買って、そがえに家もきれいにして、どっからまず金、求めやった」
 したば、
「おらえのじさ、あの菅刈って干しに行ったば、片端で『猫の音聞きたくない』て、トントンていう音すっから、よっく聞いっだら、『百十になるまで猫の音聞きたくない、ストトン、トントン』て金搗きしったけぁ、それこんど、猫の真似したば、みなネズミ金ひろげたまま、穴さ入ってしまったから、さらって来た」
 て教えたば、
「ほんでは、おらえのじさまも、やんなね。毎日休んでばりいっから…」
 なて、
「じんつぁ、じんつぁ、隣のじんつぁなどネズミ、金干したな、さらって来たって、いっぱい何か買ってきて、御馳走しったけがら、おらえのじんつぁも行ってまず菅の二三把も干して、その金、さらうように、稲場さ行ってきて呉(く)ろ」
 なて言うたずもの。そして行ったば、やっぱり、
   ストトン トントン
   百十になるまで 猫の音聞きたくない
   ストトン トントン
 て、また搗くど。片端のみな喰わえて行って、干しほし、いっぱい並べたど。そしてこんど並べた。また干すのあったべども、じさはぁ、とてもこたえでいらんねで、杉の木の上さ、片端の上さあがって、小便たっだずも。下りでの暇なくて。
「さぁ、雨降ってきた、さあ、雨降ってきた」
 て言うてだけぁ、みな金、しまってしまったど。
「ぬれないうちにしまえ」
 なて。んだからずるくして人の真似するもんでないけど。むかしとーびん。
 
〈話者 高橋しのぶ〉
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