15 雀と猿

 むかしとんとんあったけど。
 雀が竹薮さ巣くって卵産(な)したずま。ほうしたれば、猿が見つけて卵もらいに来たずま。
「雀もさ、雀もさ、卵一つ呉でけらっしゃい」
「はい、たった三粒しかないから、呉らんねっす」
 て言うたずま。
「何呉れらんね、ようし、呉ねどええか、この竹薮ひっくら返してしまうぞ」
 て言うたずま。雀は仕方なくて、一粒だけ呉たずま。猿はこの卵持って、喜んで走って行く途中、堰こあっけど。堰こぴょんと跳ねっどて、卵ぺちょっとつぶしてしまったずま。猿はまた雀んどこさもらい来たんだど。
「雀もさ、雀もさ、卵もらって行ったげんど、堰こ跳ねっどて、落としてぺちょっとつぶしてしまったから、もう一粒だけ呉てけらっしゃい」
「たった二粒しかないから呉らんねはぁ」
 て言うたずま。
「呉ねどええか、この竹薮かっ返すぞ」
 したればまた仕方なくて、一粒呉てやたずま。猿はこんどは落とさねで持って行って、家さ行って火焚いて焙(あぶ)って食ったずま。そうしたらうまくてこたえらんねずま。
「雀もさ、雀もさ、卵あぶって食ったれば、うまくてうまくてこたえらんねから、いま一粒呉てけらっしゃい」
 て言うたずま。雀は、
「たった一粒しかないから勘弁して呉(け)ろはぁ」
 て言うたんだど。
「呉ねどええか、この竹やぶかっ返すぞ」
 て言われるもんだから、また最後の一粒呉てやったんだど。そして雀が悲しくなって、チュルンチュルンて鳴いていたずま。そこさ山の方からゴロッゴロッ、ゴロッて転げて来たものあるんだど。何だと思って見たれば、餅搗く臼だったんだど。
「雀もさ、雀もさ、なして泣いでいんなだや」
 て聞いたんだど。
「あの、たった三つしかない卵、猿にみな盗(と)らっで泣いでいたんだっす」
 て言うたど。
「ほうか、よし、おれが仇とって呉っから泣くな」
 て言うたど。ほうしたれば、こんどあっちの方からぶーんと飛んで来たずま。何だと思って見たれば蜂だけど。
「雀もさ、雀もさ、なして泣いっだんだや」
 て聞いだんだど。
「猿に卵みな盗らっだ」
 はいつ聞いて蜂もごしゃえだんだど。
「よし、仇とって呉っから泣くな」
 ほれから、こんど、コロコロ、コロコロて転がって来たものあったんだど。何だと思ったれば栗だったんだど。栗も聞いてごしゃえだんだど。
「よし、おれも仇とって呉っから泣くな」
 て言うたんだど。そして臼と蜂と栗が相談して、猿の家さ行ったんだど。猿は卵食って喜んで外さ遊びに行っていだんだけどはぁ。ほしているうちに寒くなって来たから、
「うう寒い、寒い。家さでも行って火でもほじぐってあたんべはぁ」
 て、家さ来て、火ほじぐったれば、パチンて栗が思い切ってはじけだんだど。
「アチチチ…。こだえ熱くては味噌でもつけんなねなぁ」
 て、流しさ走って行ったんだど。したら蜂が味噌こがのかげから長い槍でジュグリて刺したんだど。
「ああ、いたたた、こだな家の中さいらんねはぁ、早く外さ出て行かんなねはぁ」
 て、戸の口さ出はっど思ったら、牛(べこ)のびだ糞さ上がって、ツルッ、スッテンて転んだんだど。そのとき屋根の上から臼がゴロンゴロンゴロンと落っで来て、猿ばビチョッとつぶしてしまったんだけど。ほうして仇とらっだんだけど。ドンピンカラリン、スッカラリン。
>>佐藤家の昔話 目次へ