19 三本足の犬

 犬ざぁ、四本足のうち、とも足一本上げて小便たれっどれなァ。
 ある天の神さま、犬一匹飼ってあった。
 犬の先祖というのは、足は三本しかなかったと。そして天の神さまは歩くとき、犬、めんごいもんだから、何時もつれて歩いっだと。
 ある時、天の神さまが遊びに行ったのを、知らないで、犬は一足(ひとあし)遅れて行ったと。そして行ってみたところが、天の神さまがお昼飯(ちゅうはん)食うとき、弁当から薬入れっだ袋をストンと落として、無いのも知らねで行ったと。そうすっど、三本足の犬は弁当と薬袋くわえて、大急ぎで天の神さまさ行ったと。そして、天の神さまはそれを見て喜んで、
「よくお前持って来てくれた。よく気付いてくれた。何でも望みの御褒美くれる」
 と言うたと。そしたら犬は、
「俺は世の獣は皆四本ずつ足持って、ちゃんちゃん歩いている。俺ァ三本足のためにうんと歩きづらいし、木さ登ったりするのは辛いから、とも足一本もらいたい」
 そしたば、
「あまりええどこでない。お前のええような呉れる」
 と言って、足いっぱい出されたと。そしたらばそいつは俺に丁度ええと、
「そんじゃら、ようし」
 と、神さまが撫でてくれたら、ピターッと、今の犬みたいに継がったと。そんで犬が小便たれっ時、四本足、馬や牛のようにたれっど、天の神さまからもらった足さ小便など引っ掛かっど罰当るから、んだから、その足あげられるだけ上げてたれるのだと。前には足は三本だったと。
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