25 ここら辺りは屁くさい

 むかし、村芝居があったと。
 なんばこ(全く)気ィきかないズガ(背丈け)ばっかりある馬鹿みたいな男が、役者にはまったと。ほんで何したらええか分んねもんだから、大江山の酒呑童子になれって言わっだと。
「こいつァ、鬼には、馬鹿面(づら)してるし、ズガもあっからええべ。語りようも何もさっぱり分んねもんだし…」
 鉄の棒の素晴らしく太(ふ)っといのを持って、紙に書いた〈ここら辺りは人くさい〉というのを読むだけだったと。
 舞台に出て、その字をよむと思ったら、〈人〉という字の上の方を手で抑えて読んだもんだから、
「ここら辺りは 〝へ〟 くさい」
 と言うたと。んだから、わかんねもんは何させてもわかんねもんだと。
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