47 支那の雲仙上人

 支那に、まいど、雲仙上人という手付けらんね和尚がいたったと。そんで支那の皇帝が城を築くために、石集めしたと。そしてその城の附近にはあまりええ石はないもんだから、そっちこっちから尋(た)ねて運んだと。
 ところがそんな石運ぶ人がいない。そんでもあの雲仙和尚だれば、相当な神通力も強いし、確かにあれだれば、運ぶべと、雲仙上人を言いつけたと。そうすっど雲仙上人が、お城の石のことだから、うんと嬉しがって運びに掛ったと。その雲仙はすぐに真言陀羅尼というお経を読んだと。そうすっどキント雲という岩よりも堅い雲が一杯押寄せて、雲仙が指をちょっと動かしただけで、雲は雲仙をのせて、そっちこっち動いたと。
 そんで、雲仙が石のあるところ見つけると、
「ほら」
 と、ふわっと降りて行って、すぐに雲が石をつかんで城で使う石のあらましをつかんで運んだったと。
 そして最後の石のときは、気もゆるんで、つけて来た。ところが川の上さ来たところが、女衆はまるで腰の上までも尻まくって、洗濯しったと。そしたらば、そいつばり珍らしくて見ったし、これっきりだと、気も許して、女の裸の姿などばり見っだもんだから、にわかにその雲がバサーッと溶けてしまって、石と雲仙がドサーッと女の傍さ落っで、川さ入って死んだとはァ。んだから百のものを九十九まで達成したときには、その百まで十分になるように、気持を堅く持ってやんなねもんだと。気を許して女見などばっかりするもんでないもんだと。とーびんと。
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