22 下女の手の跡

 まいど、旦那衆が何も稼がねでいるもんだからオカタ、毎年のようにオボコ産(な)して、まず困るもんだから、生れっどぁ、殺してしまい、ある時、自分の家で使っている下女が一生懸命で鍋とぎしていて、その掌、ヘソビばりになってしまっていたっけと。そこさ下女呼ばって、
「オボコは生まっでだげんど、何処さか行って始末して来い」
 と言うもんだから、下女はそのオボコ抱いて、始末に行ったんだと。そして下女の掌はヘソビばりの手で、面(つら)など撫でたもんだから、頬(ほ)ったぶ半分さ下女の手の跡、びだーっと点いたんだと。そいつも洗わねで埋めたもんだから…。
 そしてその次に生まっだのも、その次に生まっだのも、何(なえ)なんだか、かえなんだか、額さ半分、手の跡真黒についっだものばり生まれっけど。
「ほんじゃ困ったもんだ。こりゃ。こげな墨などばりついた子で…」
 と、法印さまさ行って、仏を呼んだり神降しをしてもらったりして、聞いてみたと。
「とにかく、お前のした仕事が後まで思いが残んのだから、そいつは子どもの思いだし、手の跡なくするには、その子の墓をたよって、その墓の土もらって来て、その土で、その面をよく撫でてくれっど、綺麗に落ちるもんだ」
 と。それを聞いて、その家では墓をたよって、土をもらって来て、きれいにして呉(け)たったと。どーびんと。
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