23 水滝のお不動さま

 うんとむかし、称名寺(白鷹町十王)が出きたのは千年も前だったと。その頃、片輪だったり、目が見えなかったり、体痛かったりした人は、みな称名寺さまの弟子になっかったと。そして称名寺さまの下に弁天さまが建ってだ、あそこに称名寺川という川あっこで。朝げに水垢離とって面(つら)を小僧っこめら洗うがったと。ほして曲って見たところが、何(なえ)だか、かえだか、字みたいなものが川さ流っで来(く)っかったと。そしてそいつを丁寧に拾ってみたら、梵字だったと。そいつはお釈迦様のこしゃえた梵字だもんだから、称名寺さまにもって行って、そいつを見てもらったと。
「何という字だべ」
「とにかく、こいつはこの川の源には、大聖不動明王という立派なお不動様の御神体があるにちがいない。そのためにこういう梵字が流れて来るのだ」
 それから、弟子どら、みんなつれて行ったと。その弟子の内に、眼(まなぐ)の見えない開きメクラみたいないだったと。そして行ったところぁ、お不動様どこは藪で、誰も行ったことないもんだから、ブドウ藪や葛葉藪だったりして、やっとこぐて行ったと。そして途中に岩がんけつに穴などあるもんだし、そこ通んねど、通んべくないような岩石だったと。その時、和尚さまは、
「これは胎内くぐりというもんだ」
 と言って、藤(ふじ)をくぐったり、葛葉をくぐったり、岩をくぐったりして、やっと行ったと。
「此処をくぐっと、丁度人は生れ変ったのと同じもんだ」
 と。丁度川のふちなもんだから、砂の橋掛っていだったと。
「そいつは今迄わるいことした人や、わるい心を持ってる人は、この砂は渡ると、ザクザクと川さ流っで行く。お精進のええ人ばり渡れる」
 と、砂の橋を渡って登って行ったと。そしたば、流れは三つあって、その真中の滝にちゃんとお不動様が女の姿になって顔を出していたったと。ニワトリも一杯いだったと。脇見たところが一の滝があって、そっから流って来る水はまるで薬のような水だけと。そして腹の悪い人はその水飲んだり、目の悪い人は目さその水つけてみると、腹も目もすっかり治って帰って来たと。そん時、称名寺さまがお不動様建てた始まりだったと。どーびんと。
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