42 南山の馬鹿聟

 南山の馬鹿聟が聟に行ったと。そしたら段々年寄が年寄って、親父が死んだそうだ。死んだもんだから、寺さ知らせ寄こさんなね。そんで「書いて呉れんのは誰でもええげんども、息子が書かんなねごで」と、こう書いたと。
〝父死に候。明日モニャモニャ、ガインモンモンオネガイ〟
「こいつはええげんど、上さ候使ったら、後の方にも願上候とか、候落ちたんでないか」
 と言うたら、馬鹿聟は紙も小っちゃこく、その脇さ候の字を入っだと。
「こげな小っちゃこく入っでも、和尚さま分んねがもしんねえ、んねが…」
 と言うので、その後さこう書いだったと。
『候の付くべき候ところに、落候につき、傍の小候は落した候の添書に御座候。和尚様に御念入候』
 と、尻さ書いてやったと。んだから、
「そげなめんどくさいこと尻さ書かねで、先に書いたので、ええがったごでなぁ」どーびんと。
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