47 妻の気転

 まいど、二田原という将軍いだったと、うんと金持ちで、オカタばり残して戦(いくさ)さ行ったと。そこさ五人組の泥棒入ったと。オカタは親父の言う通り、寝っだの起きて来て、わざと寝着一枚でビロサラという恰好で来たと。そしたば泥棒が金を有りだけ出せ、そしておらだの言うこと聞け。聞かないと殺してしまう、と言うたと。オカタがさっぱり魂消ないで、承知したというたと。そして命より大事な金だから、身成りを直してというて酒を飲ませったと。泥棒喜んで、ええ女だなと待っていたと。オカタが髪さ油、顔面さお白粉、唇さ、うんとごだごだと紅、からだ中さ香水つけたと。それで札を数えたから、札の角さ指のあと油、香水、お白粉、いっぱい付いたったと。泥棒喜んで、すぐ常盤町に女郎買いに行ったと。オカタはすぐに、こういう証拠だからと話して、お役人に知らせたから、すぐに捕ったと。だから親父の留守中は気強く居なねもんだと。とーびんと。
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