25 八幡寺のこと

 和田連山の峠を越えれば楷上中の沢などの沢、千古まだ斧を入れたことのない大木茂り、昼なお暗いことこの上ない。ここに楷上川が流れている。その川を登って行けば楷上権現の鎮座している。このあたりは絶壁で滝となって落ちる。
 その少し手前に寺屋敷というのがある。今もってみょうがとかうどが生える所という。むかしのこと、伊達の八幡寺、八千米水上をのぼってこの地に寺を建立して権現の別当となった。ある夜、一人の女酒をたずさえて来た。不思議に思っていると、本当に美しいので、別当は女を寺内に入れ、酒くみ交して女の膝を枕にして寝についた。四更の頃とおぼしき頃大音響に目を醒ませば、これはまた不思議、楷上沢の寺にあるかと思いの外、八幡寺に居ったのであった。それ以来権現の怒りをおそれ、山へは登らなかったという。また頂上の登るところに金の鎖があるという。いずれの沢も果しなく深く水音こだまにひびいてすごいといわれている。
(和田)
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