33 馬頭観世音

 麗かなる秋の日和のあたたかにして、そよ吹く風もいと心地よくそよぐ穂波は千町田の黄金の色も鮮やかに空に飛び交う。赤とんぼあるいは高くあるいは低くあるいはおそく速く、そのありさまは飛行機の乱舞とも見ん、ああ面白しと思う間に辿る道端のくさむらに咲ける紫黄や白赤の花の色とりどりにかおる。
 ここに馬頭なる観世音菩薩の祠宇あり、その昔源頼義が今を去ること九百有余年の康平年間の建立にかかる、本村最古の熊野神社に次ぐ古き仏堂として拝されぬ。堂中に安置し奉る仏は源頼義が日頃尊信せし石神像と共に馬面を観音堂の床下深く石櫃中に蔵めたるものにして今に霊威あらたかなり。
(和田)
>>つゆふじの伝説 目次へ