37 狸をとった話

 今から五六十年前のことであった。春の日のこと、堅雪をふんで札塚方面に行ったところ、一匹の犬を連れた狩人が通りかかった。するとどこから追出して来たか二匹の狸は犬に追われて付近の萱どぞりの中へかくれた。犬は初め嗅いでいたが、やがて中に入って叫声をあげ二匹の狸を相手に争いをつづけた。ややしばし一匹の狸は喉を食い付かれて殺され、一匹は逃げんとしたが疲れて、死んだ真似をした。犬は安心してか狩人の方にやって来た。それを知るや、狸はにわかに飛び起き一散に逃げんとしたので、犬は再び追いかけて、たちまち殺してしまった。
(露藤)
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