44 川原のやな場へかわうそ

 喜三郎さんが未だ若い頃、天王川へやなをかけた。小雨降る夏の日などには面白いほど沢山の魚がとれた。あるとき、やなをかけて夜番小屋に泊っておったら、何者とも川下から来てやなの魚を食って行く。犬にしては小さい、いたちにしては大きい畜生、驚かして呉れんと小屋にかくれて小石を拾って待った。小半時すると、また三尺ぐらいの怪物がやってきて、やなの上にのぼり、魚を拾うて食う。喜三郎さん不意に手にした石を打っつけたらキーキーといって川中へ逃げて行った。
(露藤)
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