45 色部野のみこし入道

 ある年の夏のことであった。夜おそく色部野を通ったら闇の中にぱっと明るくなったかと思うと、身の丈八尺もあらんかと思う、みこし入道が顕われた。しかし人間の常として、常には恐ろしいと思っても急所に合ったこうした怪物には、割合に胆がすわる。某は事の意外に一時は恐れたが急に胆をすえて、どっしりと傍の木の根に腰をおろし、煙草入れを取出してふかしたところ八尺ぐらいのみこしは急に一丈ぐらいになってその笑顔のすごいこと、やがて某はその下を見きわめんと腰をかがめたら、ぱっと消えた。
 いたちなどはよくみこしになって、だんだん大きくなり人の肩の上に手をかく。
(露藤)
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