46 おしげ婆さん入道にあう

 今から五・六十年前のこと安部勘右ヱ門さんにおしげ婆さんというのがおった。後妻のため勘右ヱ門さんと二人小佐家に分家した。ある春の夜のこと用事があって下舘の平間藤四郎さんへ行った。そして思わず時刻はうつって帰宅したのは夜も更けてであった。あいにく提灯もなくただ一人暗路をやって来た。今しも三郎右ヱ門さんの古屋の東へ差しかかったら濠にかかって一本のだんごの木があった。その木へ来ると木の上で何やら笑う。あまりの不思議さに木の上を見たら、その丈六七尺もあらんと思う大入道くすくすと笑うのであった。今はただ恐ろしくなり後をも見ないで一散に小佐家の自宅に帰った。これがもとで二三日寝たという。
(露藤)
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