54 水練菊太大蛇をなでる

 下長井生れの者に菊太という水練がおった。非常に水練上手で水中にくぐって三分ぐらいはいるといわれた剛の者であった。その菊太が露藤村へ来た。ある日のこと天王川の橋の付近で魚とりをした。そして大蛇をなでた。初めは魚の大物ならんと腹のあたりから尻の方まで長いこと五尺ばかり、その末大蛇と知れたときは急に恐ろしくなり、上って来た。顔は青ざめ人の色ではなかったといわれる。その後は決して水練はしなかったという。
(露藤)
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