81 どぶすまのどっさり

 およそ百二三十年前、入生田の糸引部落から百野へ通ずる道路、山の神の社の辺りは淋しい処であった。ここに昔のこと、伊藤源右ヱ門さんとて土豪の屋敷跡があった。夜になってこの辺を通れば、なにものとも知れず、どっさりという音がする。何者の音か知ることは出来ない。人通りはない。子どもや女は外出する者もなかった。人呼んで、「どぶすまのどっさり」といった。こうしたことが、幾年も続いた。今もってその何者か知る人はない。
(入生田)
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