83 仙重さん狐にとりつかる

 三十五・六年前のこと、亀岡村入生田十文字に、大上店という料理屋があった。その息子さんに仙重さんというのが居った。同人はまだ二十才頃のこと、突然いろいろなことを口走った。おれは狐だ、お稲荷さまだなどというのであった。そして夜な夜などこともなく姿を消した。そしてその度毎、油揚なども持参して行く。家人もひどく心配して、行く先を人に依頼して見届けせしめたところ、鉄道線路から西へ西へと松川端へと出た。その頃、横山土手に狐はいた。そこへ行くと持参した食物を食えという。どこから集まったか五六匹の狐が仙重さんを取巻いて食うのであった。某は仙重さんは八郎の方へ行くのであった。八郎はその頃狐の巣窟であった。そして堤のあたりで遊んで来るのであった。いつの間にか狐のついたのがとれた。
(露藤)
>>つゆふじの伝説 目次へ