11 鳩 と 烏

 あるところに、ええ地主があって、毎日お客様なもんだから、料理人一人かかえっだそうだ。その料理人が心の柔しい親切な奴で、鳩を、通し来っから、鳩の住場、グシの下さ拵えてけっじぇ、鳩も喜んで飛んで行っては夕方帰り帰り、そういうとこ見て、烏は、あるとき軒場の下さいたど。今度、とんな友達に鳩は烏を連(せ)て来ったなと思って、その料理人が、烏にも住場を拵ってけだど。鳩は立派なもんだから、二匹で騒いで、ものを食っては帰り帰り、あるとき、烏は腹病(や)みしたど。
 腹病みで今日は働きに出きらんねど鳩は見っだもんだから、この家のうまいものを食いたくて、腹病みしてる恰好なのがわかったど。
「おらだも毎日働いて来ては、泊り泊りしてな、働かないではええごとざぁないから、働きにあえべ」
「おれは腹病めて行かんね」
 という。鳩は餌探しに行って、餌いっぱいつめて帰る。烏はそれを、
「今日は何か、あまりうまい匂いするからます…」
 と、腹病みという嘘語っていたところが、家の中ではうまい料理はじめる。料理人が、こんどは包丁砥ぎに外さ出はったところを、台所さ行って烏は食っていたど。そうしたところが、入ってみたところが、烏が皆突っついて食ってしまったど。そんでこんどは怒って、
「その烏を、おれは親切にして、雑把(ざっぱ)でも何でも食せる。そんでこげなええものを食うざぁない」
 というもんで、ごしゃえで、皆赤むくれにして塩水さつけて、こんどはガァガァと啼いて、ぶん投げらっでしまったど。鳩は、
「あれくらいに働いて、余計なとこもらったら、ありがたく食うごんだらだげんど、働かないで、贋腹つかっているなんて、間違っている。おまえはええ心もたないからだ」
 というもんで。そのうちに烏は死んでしまったって。あまり狡いことして食うべと思うと、間違っている。鳩は立派だから、いつまでも飼わっだど。

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