108 沢庵漬の由来

 むかしむかし、沢庵和尚というえらい和尚が流罪になって、上山藩お預けになった。ところが徳のある和尚さんなもんだから、百姓あるいは町人からいろいろもらい物あった。ほして秋さかなの、大根、菜っぱなの、ししゃますするほどもらうがった。んだげんど、物を無沙汰にさんねて、常日頃教えているもんだから、はいつ一杯もらったな、捨てるに捨てらんねもんだから、軒場さ下げて、ほして乾かして、がさ少くして大根漬けだ。ほうして漬けて、ほこさ百姓など行って、お茶御馳走なって、ほの、干して漬けた大根、御馳走になったれば、むやみうまいがった。
「和尚さま、和尚さま、こだえうまい大根漬け、あなたのお名前頂戴して、沢庵漬て名付けたら、なんたべ」
 ていうわけで、ほれから大根干したの漬けたの〈沢庵漬〉ていうようになったど。どんぴんからりん、すっからりん。
>>蛤姫(下) 目次へ