71 黄粉爺

 むかしむかし、あるところにじんつぁとばんちゃいだった。ほして二人とも黄粉好きなで、ほして牡丹餅さも黄粉、ほら餅も安部川にして食う。あるいは御飯さもかけて食う、二人とも黄粉好きだったど。
 あるとき、
「じんつぁ、じんつぁ、黄粉挽いでけろ」
 て、頼まっだ。ほんではというわけで挽き臼で一生懸命挽いで、種子コ残ったな、
明日(あした)、こいつ臼で(はた)くべはぁなぁ」
 ていうわけでいだった。ところが挽いた黄粉、土間さ置くどネズミに食われる。下げるにゃ、ほだえいっぱいの黄粉下げっどこない。なぜしたらええべて、
「ははぁ、抱いて寝るに限る」
 て、じんつぁ、はいつば夜中に寝床さ入っでうしろの方さ置いっだ。どういうわけだかほのじんつぁ、夜中に相当お尻鳴らす方の癖あった。ほして起きてみたれば、みな黄粉はそっちゃ吹っとび、こっちゃ吹っとび、相当減ってだ。ばんちゃへ、
「なんだまず、じんつぁ、黄粉、(けつ)さ置いてなんて、自分が屁たれんな知しゃねわけであんまいし」
 なて、ばんちゃにごしゃがっだ。ほしたれば、何だかごそごそ、ごそごそなて音すっから、はいつ見たれば、キジだっけて。ほれ、じんつぁ屁たっで、黄粉の粉吹っとばしたもんだから、ほの匂いかいで、キジは煙出しから入ってきた。豆食だくて。ほしてキジせめて二人して、キジ汁して食った。
「じんつぁ、やっぱり、また黄粉挽いだら尻の方さ置がって呉ろはぁ」
 て言うたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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