78 弘法の石芋

 むかしむかし、弘法さまていう、えらい和尚さま、ずうっと行ったれば、田の中に芋ほりしったおかちゃんいだっけて。
「もしもし、芋、おれさ()でけらんねが」
 弘法さん言うたれば、
「いや、この芋は食んねぇ芋だ。石芋だからて、わかんね」
 て、そっけもなくことわってしまった。ほしてほだえしているうちに、次の年から、実った芋、ガツガツして、石と同じではぁ、本当の石芋になって食んねがった。
 したれば誰言うとなく、みんなあそこで、芋ごいした人は、あれは弘法さまだったていう、そういう話なて、ほのおかちゃん、
「いゃ、悪れごとした、ほんではおれ悪れなだった」
 て、ほして高野山さ、こんど本当の芋たがってお詫びに行ったって。ほれから田の中の石芋、元の里芋になったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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