80 七草

 むかし、正月、七草には七草がゆていうものしたもんだけど。
 ある人が、なんだかみんな年取って行くのがどうしてだべて考えだれば、夜、枕神立って、唐の国からと大和の国から鳥とんできて、ほして栄養のあるもの、みな食ってしまうがらだって。んだから、はいつ食んねうち、こっちの方で食ってしまわんなねていうので、はいつぁなんだかて言うど、七草だ、春の七草、
 せり、はこべ、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ
 こいつばみな唐土の鳥と大和の鳥、来ねうちはぁ、叩いて食ってしまう。んだど年とらねて言うたもんだ。ほしてどこの家でも、六日の日に準備して、七日の日、なんなん叩きていうのやったもんだ。
  なんなん七草
  唐土の鳥と大和の鳥の
  渡らぬうちに
  なんなん叩き
  七たたき
 て、こういう風にとなえで、スリコギ棒で七草ば叩いて、七草がゆて言うて、おかゆにして食べだ。ほうすっど、栄養もよかったと見えて、(せん)には、それを長年の生活の智恵で、どこの家でも七草がゆていうな、七草たたきていうの、聞がっだもんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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