17 屁つかみ

 ある旦那衆に、あねこと兄んにゃを奉公に二人置いっだっけと。どっちもまず屁たれで屁たれで御飯(おまま)食ってでも屁をぷうとたっだかと思うと、またお膳持(たが)って立つと思ってぷうと、そっちでもこっちでもぷう。屁たれくらばっかりしている。その家の旦那も先のうちには、
「屁はたれるもんでない」
 なんて威張っていたげんども、後ではおかしくなって、
「こいつ、いつか屁たれくらさせてみっか」
 と思って、正月の十五日の晩げ、二人どさ、
「あんにゃ、あね、あんだだ屁たれは中々達者なもんだ。一つ屁の掴(つか)みくらやってみたらええんねが」
「ええどこでない」
「んじゃ、二人は向かい合って一緒にたんねと分んねぞ」
 なんて、
「んじゃ、俺、号令かけて呉(け)る」
 そして、ばーんと、二人がたっだと。そうして今度ぁ、
「掴んだ方さ御褒美をいっぱい呉(け)る。掴まんね方は御褒美は呉(け)ねっこだべな」
 そうしていたところぁ、屁たっだ拍子に、あねこは、
「あっ、掴んだ、つかんだ」
 と言うと、あんにゃっこも、
「掴んだ、つかんだ」
「んじゃ、俺ぁ一つ調べて見んなね、ははぁ、あねこは掴んだと言うげんども、屁の子だな、こりゃ、屁の子供では半分か三ガ一の御褒美だ。あんにゃっこは何つかんだ?」
「屁・屁と言うもんで、屁二つつかんだ」
 そして、あんにゃっこばかり、でっつり御褒美もらって、あねこは半分しかもらわんねがったと。
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